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絵の色の話

 TBS「報道特集」より「色覚異常〜検査の是非は?」(2017/12/9 放送)

 番組の中で、当事者の描いた絵が「異常」の例証として取り上げられました。

 そのように当事者の描いた絵の色遣いを「色覚異常のわかりやすい例証」として出すのは、もうやめにすべきでしょう。

 根本的に、人間の文化的活動とか創作物についての敬意が欠けていると、私には感じられます。

 つまり、学校の授業等で描いた「作品」としての絵をこんな形で使ったのなら、たとえ当人たちの同意があったとしても、倫理的な問題があるのではないかと感じられます。(番組では、何のために描かれた絵なのかの説明はありませんでしたが、もし、色覚を試すために絵を描かせたのだとしたら、それはそれでまた問題ではないかと思われます)。

 絵について「躍動感」といったナレーションのフォロー?はあったものの、「異常」という文脈は視聴者に対して「だけどこんな色遣いじゃね」「お気の毒に」といったメッセージを言外に発生させる危険があるでしょう。しかも就業問題について考える番組なら「これじゃ色を扱う仕事はやっぱりムリ」という臆測を発生させてしまう危険もあるでしょう。

 教育的観点からはもっと問題でしょう。

 いくつかの伝記的資料から察するに、みんなで一斉にホンモノ通り?の同じ色を塗らせる、という美術教育は、しばしば、「色弱あぶりだし装置」と化してきました。おそらくは多くの当事者が美術の時間を不安と恐怖で過ごしてきたのです。

 美術の話にとどまりません。絵が好きになった子が観察力をみがいて理科好きになるかもしれないのが初等教育の世界です。本当にそうなるかどうかは別として、そこに芽を出している成長とか発達が「人の可能性」というものでしょう。

 「あなたは尊重されるべき存在なのだ」というメッセージなしに、絵を「異常」の証拠としてさらし、あるいはただ「異常」を言い渡しておいて、検査結果は前向きに受け止めればいいではないか、自覚があれば他者にフォローを求めることだってできるから、とは、ひどい論理矛盾と無神経ではないか、と私は感じます。

2017年12月17日 facebook
 

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