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学習漫画

 第1シリーズの第5話第14話で、子どもの頃に読んだ学習漫画のことを書いたあと、ずっと気になっていた。あれは正しい記憶なのだろうか、なにか思い違いをしていないだろうか、と。

 手がかりは『人体の神秘』というタイトルの記憶だけだった。
 古書ネットでさがしたり、機会あるおりに神保町古本屋街で探索したりしたのだが、なかなか見つからなかった。国立国会図書館で検索すると上野の分館=国際子ども図書館に『人体の神秘』1972年版があるとのこと。東京で仕事があったときに機会を作って訪れ、閲覧してみた。が、確かに見た本なのだが、記憶の頁はない。やはり勘違いを書いてしまったのだろうか……

『人体の神秘』表紙

 手探り状況が続いていたのだが、2010年になってやっとネットオークションで入手できた。子ども時代の私が見たのは次の本である。

 鈴木敬信・古川晴男・鹿沼茂三郎(監修)、1969(昭和44)、『なぜなぜ理科学習漫画 9 人体の神秘』、集英社

 国際こども図書館に収蔵されている『人体の神秘』1972年版は、これの改訂版である。この版は収蔵されていない。

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 さて該当の箇所は同書28頁の「色盲」である。1頁で完結。見だしのコマがひとつ、本文のコマが5つ。台詞のある登場人物は次の3名。
・スーツ姿の男性(教師だろう)
・少年(生徒だろう)、仮に「A」
・同「B」。

 内容は次の通りで、大筋は記憶と同じであった。

以下は過去の資料の紹介です。読解と取り扱いには注意してください。

■ 見だしコマ:
 大きな文字で「色盲」というタイトルがあり、普通のフォントで次の解説文が添えられている。「色盲は色がよくみわけられない目の病気です。この病気をみつけるのには、色盲検査票をつかいます」。

学習漫画『人体の神秘』より「色盲」

 タイトルと解説文の中間に、本文に登場する一人(帽子が共通)に二人を加えた三人の男の子が描かれており、胴体に「正常」と書かれた子が「57」、「赤緑色盲」と書かれた子が「35」、「赤緑色弱」と書かれた子が「35」と答えている。色盲検査の風景だろうが検査票や検査者は登場しない。

■ 第1コマ:
 町外れの草地に腰を下ろして写生をしている少年A。その背後から、教師が語りかける。
 「そのたてものはもっと赤いよ」。
 教師は向こうの木陰からのぞく赤い屋根の家を指さしている。少年Aは腰掛けたままうしろをふりむいて、不思議そうな顔で教師を見ている。

学習漫画『人体の神秘』より「色盲」

■ 第2コマ:
 少年Bと少年Aが、ランドセルを背負い、写生道具入れらしい手提げ鞄をもって、並んで下校している。
 少年B「きみは色盲かい」
 少年A「色盲ってなんだい」。

学習漫画『人体の神秘』より「色盲」

■ 第3コマ:
 下校途上の続き。少年Bが自分の目のあたりを指しながら
 「色がよくみわけられない目のことさ」。

■ 第4コマ:
 少年B、隣接する第5コマを指さしながら、
 「だから、色盲の人にはにがてなしごとが、あるんだよ」。

学習漫画『人体の神秘』より「色盲」

■ 第5コマ:
 画家はカンバスを前にパレットと絵筆を持っている。
 教師は黒板の前で本と差し棒を手にしている。
 印刷工は大きな輪転機の前に作業服姿で立っている。
 薬剤師はすり鉢の置かれた机の前に白衣とマスク姿で薬瓶を手にしている。
 運転士は大きなセダン車の運転席から顔を出している。
 それらイラストの下部に、幼児たち4名と「汽車ぽっぽ」ごっこをして遊ぶ少年A。少年Aは、一番背が高く年長に描かれているが、しかし運転手役は小さな男の子にゆずり、「しかたないや、おきゃくさんでがまんしよう」。落胆を示すのか、汗が3滴、頭からとびちっている記号が添えられている。

学習漫画『人体の神秘』より「色盲」

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 1969(昭和44)年の時点では、色盲はすでに一斉検査がおこなわれているはずなので、第2コマの少年Aの「色盲ってなんだい」というセリフは、かなりおかしい。私はこの本を読んだ時点で、自分が色弱であると知っていた。ストーリー上の必要でもあろうが、当事者の無自覚性という理解を表現するための演出であるとも思える。
 また、「運転士」の姿として公共交通機関のそれではなく普通乗用車の運転が描かれていることからは、普通自動車の運転免許に色覚制限があった時代があるのではないかと憶測できるが、あるいは誤認かもしれない。

 なお、ちなみに私の妹や弟は1972年版のを見た。その巻にはそもそも色盲の単元じたいが存在しない。ほんの数年のちがいで、読書体験が異なることになる。

 これ以前の版がどのようになっているかは確認できていない。

2010年12月版

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