第1シリーズの第5話と第14話で、子どもの頃に読んだ学習漫画のことを書いたあと、ずっと気になっていた。あれは正しい記憶なのだろうか、なにか思い違いをしていないだろうか、と。
手がかりは『人体の神秘』というタイトルの記憶だけだった。
古書ネットでさがしたり、機会あるおりに神保町古本屋街で探索したりしたのだが、なかなか見つからなかった。国立国会図書館で検索すると上野の分館=国際子ども図書館に『人体の神秘』1972年版があるとのこと。東京で仕事があったときに機会を作って訪れ、閲覧してみた。が、確かに見た本なのだが、記憶の頁はない。やはり勘違いを書いてしまったのだろうか……
手探り状況が続いていたのだが、2010年になってやっとネットオークションで入手できた。子ども時代の私が見たのは次の本である。
鈴木敬信・古川晴男・鹿沼茂三郎(監修)、1969(昭和44)、『なぜなぜ理科学習漫画 9 人体の神秘』、集英社。
国際こども図書館に収蔵されている『人体の神秘』1972年版は、これの改訂版である。この版は収蔵されていない。
さて該当の箇所は同書28頁の「色盲」である。1頁で完結。見だしのコマがひとつ、本文のコマが5つ。台詞のある登場人物は次の3名。
・スーツ姿の男性(教師だろう)
・少年(生徒だろう)、仮に「A」
・同「B」。
内容は次の通りで、大筋は記憶と同じであった。
以下は過去の資料の紹介です。読解と取り扱いには注意してください。
1969(昭和44)年の時点では、色盲はすでに一斉検査がおこなわれているはずなので、第2コマの少年Aの「色盲ってなんだい」というセリフは、かなりおかしい。私はこの本を読んだ時点で、自分が色弱であると知っていた。ストーリー上の必要でもあろうが、当事者の無自覚性という理解を表現するための演出であるとも思える。
また、「運転士」の姿として公共交通機関のそれではなく普通乗用車の運転が描かれていることからは、普通自動車の運転免許に色覚制限があった時代があるのではないかと憶測できるが、あるいは誤認かもしれない。
なお、ちなみに私の妹や弟は1972年版のを見た。その巻にはそもそも色盲の単元じたいが存在しない。ほんの数年のちがいで、読書体験が異なることになる。
これ以前の版がどのようになっているかは確認できていない。